2015年11月10日火曜日

荒神神楽(備中神楽)

備中では各地区で式年祭として、日本神話を元にした荒神神楽が奉納されます。

こちらで荒神とは素戔嗚命(すさのおのみこと)を指し、荒ぶる神を祀り鎮める事によって、災害が起こらないように願うお祭りです。

今回はその神楽に行ってきました。
色々書いていきますが、地方による漢字の違いや、単なる私の間違いもあると思いますので、そこはひとつご容赦を。

神殿神事
祭事に際し、先ずは下準備。舞台を清めます。

猿田彦命(さるたひこのみこと)
猿田彦命は天孫降臨の際に先導した神。
神事にあたって、邪なるモノを払います。

和太鼓1つを主な音楽としており、ほぼゼロ距離で演奏がなされるため、和太鼓の振動がズドンズドンと体に響きます。
これはヘタな豪華演奏なんか要りませんわ~。

ビシッ!
備中神楽は民家で舞う事を前提にしているので、奥の間サイズの舞台がメイン。
昔は神楽が舞えるように、格天井の奥の間がある家まであったりしました。

長刀ブンブン!
目の前で武具を振り回します。
先にも書きましたが、ホントに近いです。
目の前で手加減無くブンブン振り回します。

白蓋神事
八百万の神々を呼びます。
綱1本で白蓋(びゃっかい)を四方に操る技がすごい!

神々は四方上部の御幣に降臨すると考えられています。

神様いらっしゃ~い
今回は、光量が十分でなく動作の激しい場面が多いと考えられるので、感度は800以上にスピードライトを使ってシャッター速度優先で撮影に挑みます。
ブレが欲しいシーンなんかはシャッター速度を抑え気味にしてみましょう。

いよいよ、神代神楽の始まりです。



「天岩戸開き」


日本神話では有名な「天岩戸開き」です。

ざっと言うと、弟神の素戔嗚命(すさのおのみこと)による度重なる悪業(わるさ)により、引きこもりニートになってしまった姉神の天照大神(あまてらすおおみかみ)を更正させるというお話。

まぁ・・・チョットだけ嘘です。

思兼命に相談中
天照大神が天の岩戸に引きこもり、国中が真っ暗になってしまったため、困った天児屋命(あめのこやねのみこと)と天太玉命(あめのふとだまのみこと)が、思兼命(おもいかねのみこと)に相談。

天鈿女命(あめのうずめのみこと)
思兼命「アイドル呼んでコンサートすりゃ、出て来りゃせんか?」

天児屋命・ 天太玉命「それは名案!」

天鈿女命「うぉぅうぉぅ☆いぇぃいぇぃ☆」

手力男命(たちからおのみこと)
神楽の演目の中には一人、茶利(道化)役が出てきます。
「天岩戸開き」では手力男命です。
太鼓の音楽さん相手にボケまくります。

昔から続く伝統芸能ですからね。今では不適切用語と言われる言葉もバンバン出てきますが、難しい長台詞だけではなくて、観ている人が楽しめる要素が盛り込まれているのが、芸術然としていなくてとても良い。

岩戸を開く!
天鈿女命の舞を覗き見ようと、天岩戸をちょっと開けた隙間を、剛腕の手力男命がこじ開けます。

天照大神 顕現!
天照大神が姿を現し、国中に光が戻りました。

世の引きこもりニートの親御さんは参考になさってください。



「国譲り」

高天原(大和国)が権力を握るため、出雲国に国を献上させるお話。
ちなみに、高天原は天照大神の一族、出雲国は高天原を追放された素戔嗚命の一族。

大国主命(おおくにぬしのみこと)
先ずは、七福神で有名な大黒天こと大国主命。
国譲りに関して高天原から派遣された勅使が、進んで家来になってしまうほどの凄い神様。

手にはかの有名な打出の小槌。

餅投げ開始!
一通り舞が終わると餅投げが始まります。
現場の一体感がすごい。

餅が私を直撃す!
ん~?もち~?
痛てーよ!痛てっ!痛ててててっ!痛てーよ!
餅の弾幕が私を直撃。

国譲りの会談中
いくら勅使を送ってもらちが明かない事に業を煮やした高天原が、経津主命(ふつぬしのみこと)と武甕槌命(たけみかづちのみこと)を派遣。

大国主命 暗殺未遂事件
しかし、交渉は決裂。
キレ易い若者の天津神両神が大国主命に襲い掛かる!
大国主命も打出の小槌で応戦。

まてぇ!こりゃー!
そこに元勅使で大国主命の家来になっていた稲脊脛命(いなしはぎのみこと)が割って入る。
国譲りでの茶利役はこの神様。
問答の末、両神が自分より高位の神であることを知り平身低頭。
自分が仲介して話を付ける事に。

こうしてみては如何でしょうか?
子である事代主命(ことしろぬしのみこと)に相談してみてはどうかと提案。
ではひとつ、呼んで参れ。

いなし走る!
美保関で釣りをしている事代主命を呼びに行くため、船に乗り、馬を走らせる。

事代主命
七福神の一人、恵比須様こと事代主命。
色々習合した結果、親子揃って福の神。

出雲の国あげます。
大国主命、事代主命が相談の結果、和を持ってなすべきとの事で、国を譲ることが決まり、大国主命は出雲大社に、事代主命は美保神社それぞれ祀られることになる。

武御名方命
ところがどっこい、もう一人の子、武御名方命(たけみなかたのみこと)が国譲りに猛反対。
武器を様々に持ち替えての合戦に!

勝負!
両手と口に刀咥え、三刀流の武御名方命。
様々な武具を操る鬼神として表現されているあたり、壮絶な強さだったのでしょう。

長い合戦の後
国譲りの半分は合戦シーンというくらい長い合戦が終わり、武御名方命が降伏。
信州の諏訪神社に祀られることになる。

古事記などでは情けないやられ方で描かれていますが、勝った側がそう書きたくなるくらい苦戦を強いられたのでしょうね。

備中神楽では武御名方命に好意的な表現になっています。
太鼓の音楽さんが武御名方命を応援したりするので、天津神両神がキレたりします。



「大蛇退治」

いよいよ神楽の大トリ「大蛇退治」です。

時系列で言うと「天岩戸開き」と「国譲り」の間のお話。

素戔嗚命(すさのおのみこと)
やんちゃが過ぎて高天原を追い出された素戔嗚命。
出雲の国に降り立った。

面の造形が良い
今回、写真を撮っていて思ったんですが、フルサイズセンサーにはフルサイズ用のレンズが欲しいですね。

APS-Cクロップで同じ画角とは言え、17-55mmでは望遠側が弱くなり、おまけにボケが少ない。
どう頑張ってみても 24-70mmの70mmの方が多くボケるのは必至。

パンフォーカスだけだと記録写真っぽくなっちゃうので、すこし遊んだ絵も収めたいんですよ。

お頼み申す
素戔嗚命が旅の途中、脚摩乳命(あしなづちのみこと)手摩乳命(てなづちのみこと)に出会う。

聞けば、干ばつの折、雨を恵んでくれたら娘を差し上げると祈ったところ、それを聞きつけた大蛇が雨を降らせては娘を呑み、また翌年に雨を降らせては娘を呑んで、八人の娘がとうとう最後の一人となってしまったと嘆く。

娘を助けたいとの願いに、素戔嗚命は「自分が娘と婚約すれば、大蛇は我が姉達の敵となる」として、大蛇退治を引き受ける。

奇稲田姫
素戔嗚命が奇稲田姫(くしなだひめ)と婚約。
大蛇を退治するまでの間、八重垣をつくり、その身を隠させる。

まっつぁ~ん!!!
この神を知らずして、備中神楽を語る事無かれ。
本演目の茶利役かつ酒造りの守護神、松尾明神(まつのおみょうじん)登場!
大蛇を酔い潰す 毒酒 醸造を請け負う。

登場と同時に、歌をメインにした話芸や時事ネタで場を沸かせます。
多分、主人公より人気があるよ。

酒造り
でも、仕事はきっちりします。
室尾明神(むろのおみょうじん)と木名玉明神(くしなたまみょうじん)と共に酒造り。

造るのは「神変奇濁八塩折之酒」が八千石。
昔話によく出てくる神変鬼毒酒は、善なる者には力を、邪なる者が飲めば力を失うと言います。これもその類いでしょう。
濁酒は濁り酒。どぶろくの事ですね。

できたよー

神変奇濁八塩折之酒 八千石が完成し、いよいよ大蛇退治です。

八岐大蛇登場!
その大蛇は頭が八つ尾が八つ。
目は鏡の如く輝き、背には山を負い、腹は赤くタダレている。
名を八岐大蛇(やまたのおろち)という。

八百万(やおよろず)という言葉からも分かるように、「八」という数字は沢山という意味があるので、大蛇も八頭ではなくて多頭と考えるのが妥当でしょうね。

毒酒をゴクリ
八千石の毒酒に奇稲田姫の姿を映し、大蛇が酒に映った姫を呑もうと樽に頭を突っ込むと・・・。

えいや!
毒酒で酔って管巻き状態。
酒に飲まれる酔っぱらいは最低です。

そこへ斬りかかる素戔嗚命。

決戦!
目を覚ました大蛇と決戦です。
唸る天羽々斬剣(あめのはばきりのつるぎ)!
眼前で繰り広げられる、巨大な大蛇との大迫力の演舞!
八畳の舞台を所狭しと暴れ回る八岐大蛇。

背後にあるデジタルテレビも全然気になりません!

大蛇獲ったどー!
見事、大蛇の首を討ち取りました。
それにしても、大蛇の造形がたまらん出来栄えです。
このシーンは、もっとローアングルから撮れば良かった。
アングルファインダーが無いと体勢がきついけど。

八岐大蛇ぐるんぐるん
胴体だけになってもなお暴れ狂う大蛇。

背景をもっとボカしたいな。
天羽々斬剣が欠けたので大蛇の尾を裂いてみると、中から天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)が出てきました。

そうびしますか?
>いいえ

この宝剣は天照大神に献上するそうです。



脚摩乳命(あしなづちのみこと)による喜びの舞で幕。
映画のエンドロールのような感じで、平穏な時間が流れてゆきます。

備中神楽には他の演目もあるのですが、こちらでは主にこの三演目が奉納されています。
時はそろそろ日が変わる頃。

日没から延々見続けましたが、見どころ満載で良かったですよ。

ってことで、長々と書きましたが、お付き合いありがとうございました。

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